北海道札幌の自然

アジサシ　動画＝アジサシの声・ダイビング　チドリ目カモメ科　Common　Tern　【Sterna　hirundo】

夏、札幌近郊ですと、石狩浜や小樽ドリームビーチ、新川河口になど、海辺に行かれることがあると思い、海の鳥といえば普通皆さんカモメ類を思い浮かべられるでしょうが、そんな海岸に行かれた時、砂浜でちょっと休まれている時、沖を眺めて戴くと、海の沖で、空中から盛んにダイビングしている鳥、「アジサシ」、という鳥が観察出来るかもしれません。

「アジサシ」、それはカモメ類にごく近いグループの野鳥です。

体は、頭が帽子を被ったような黒、　顔・お腹や首は白、背は薄い色のグレー。 外観や習性 もカモメ類に酷似しているのですが、カモメ達よりも、体も小さく、ほっそりして、二股の燕尾状の尾を持ち、ナイフの様な形をした細い翼（つばさ）を鋭く動かし、空中から海に飛び込んで採餌を致します。それで、「魚の鯵を刺す、空中から水中の魚めがけて一気に突っ込む習性から「アジサシ」という和名がきています。

世界でアジサシ＜類＞は44種程知られ、世界的に分布している野鳥です。日本では本州などでコアジサシというアジサシの仲間や、オニアジサシなど7種が繁殖しています。しかし、北海道においては、彼らアジサシ類の繁殖は無く、この「アジサシ」が、春先や、真夏・．秋口にかけて、海上や湾内や河口に行くと見られる可能性しかありません。

アジサシは大きさが35センチ程、翼を広げると85センチ程ですから、北海道で良く見られるオオセグロカモメというカモメを丁度半分にした位の大きさの野鳥です。

で、このアジサシ。飛ぶために生まれて来た鳥のように、水面上を殆ど止まることなく実に良く飛翔します。その動きは、空気を切るように、ナイフの様な形をした翼を鋭く動かし、この切れ味の良い翼の動きがこの鳥の魅力で、多分皆様は、青い空、青い海と共に、白い体で飛ぶ彼らの綺麗な姿を一度見たら、忘れがたい印象を持たれると思います。

さて、このアジサシの特徴は、先程説明した名前からも解る様に、空中から海中に向かい採餌の為に一気にダイビングする事が上げられます。ここが彼らと似ているカモメ類と＜最も違う点＞なのですが、アジサシはかなりのスピードで、高い空の位置から、海に一気に、しかも群れで飛び込む事が多いので、海岸から彼らのその様子を見ていると、凄い水しぶきがホー゜ンホー゜ンと上がるのが見える程です。

それは、私が見た彼らの採餌は、まず嘴を下に下げ、時折尾羽を押し下げて、ヘリコプターの様にホバリング気味にし、空中に留まって狙いを付け、餌である海中の魚の様子を見て、タイミングを計って、頭を下に真っ直ぐい水面に突っ込んでいました。　

彼らは鋭く尖った細長い特徴有る嘴で、魚をつかむ為に水の中に入るのですが、その折りＶ字型に翼を背後に高く差し上げていて、けして翼が完全に水中に入ってしまう事はありません。

そして、海に突っ込んだ後、ただちに翼を水で押し分けるように浮き上がり、空中に飛び上がります。なお、水に飛び込んだ後、水に浮いて、泳ぐ事は殆どしていませんでした。

また私が見ている限りにおいては、何度も何度もそうやって空中高くから水面に突っ込む割には、なかなかお魚ゲットにはならないようで、少し可哀想に思えました。また余りに高い場所から水中に飛び込むので、脳震とうを起こさないかな、とも思いました。

そんなアジサシも時折嵐の後や、風があまりに強い日等には、砂浜で群れで休んでいる事もあります。しかし、アジサシは飛ぶのに優れていましても、体の割に足が著しく小さく、殆ど降りたままで、歩きません。また杭に止まって休む事もありますし、水浴びのため、海面に浮いていることもあります。

補足＝このアジサシの仲間にキョクアジサシと言う鳥がいます。この「キョクアジサシ」は北極圏で夏繁殖し、北極圏が冬、南極の夏に南極に渡る。つまり、北極と南極を往復する＝片道一万2800キロ、一番長い距離を渡って移動するアジサシの仲間も居ます。

　［和］アジサシ〈鯵刺〉　［中］燕鴎　［ラ］ Sterna 属、その他　［英］tern　［仏］sterne　［独］Seeschwalbe　［西］charrn　［蘭］stern　［露］крачка

【名の由来】 属名ステルナは、スカンディナヴィア語由来。ちなみに古ノルウェー語ではアジサシを therna と称した。英名、仏名もこれに準ずる。 和名は、空中から水面の魚めがけて一気に突っこむ習性に由来する。 (世界大博物図鑑　鳥類, p. 600)